概況
8月28日の米国市場は、ウォーシュFRB議長の初めてのジャクソンホール講演が一日の値動きを決めました。議長は米経済の強さを評価しつつ、「この夏のPCEやCPIは予想より良い数字だったが、インフレの基調的なトレンドが意味のある形で改善したとは読み取れない」と述べ、金融政策には引き続きやるべきことが残っているとの認識を示しました。9月のFOMCでの利上げを明言したわけではなく、フォワードガイダンスを出さないという就任以来の方針も維持していますが、前日まで市場が寄りかかっていた「利上げ観測の後退」というシナリオを否定した点が重く受け止められました。
反応が最も大きかったのは為替と金です。ドルは全面高となり、ドル円は0.51%の円安ドル高で160.07円と節目の160円に乗せ、ユーロドルも0.56%安の1.1590まで下げました。金は2.21%安の4,507.9ドルと大きく崩れています。前日は同じ金が「9月利上げは遠のいた」との読みで4,663ドルまで買われていたわけで、わずか一日で前提が入れ替わった形です。金利が高止まりするなら、利息を生まない金を持つコストは重くなります。
株式の下げは為替や金に比べれば限定的で、S&P500が0.26%安、NYダウはほぼ横ばいの0.02%安にとどまりました。相対的に弱かったのはナスダック総合の0.54%安で、これは金融政策だけでなく個別材料も効いています。前日引け後に決算を発表したマーベル・テクノロジーが、過去最高の売上高と通期見通しの上方修正を示しながら6%前後下落しました。期待を集めていたグーグル向けカスタムチップの収益貢献が2029年度以降になると説明されたためで、エヌビディア決算で戻したばかりのAI関連の勢いに水を差した格好です。
まとめると、この日の相場は「インフレはまだ終わっていない」という前提への揺り戻しでした。株の下げが浅い一方、ドル高と金安がはっきり出たのは、市場が景気そのものより金利の経路を見直したことを示しています。来週は9月4日の雇用統計を軸に、インフレ警戒と景気の綱引きが続きそうです。