概況
9月2日(水)の東京朝の時点で参照できる直近の米国市場は、9月1日(火)の取引です。相場を動かしたのは、前日から続く中東情勢が「軍事拠点」から「商船」へ広がったことでした。8月31日夜、ホルムズ海峡を出航方向に航行していたサウジ籍と韓国船主の原油タンカー2隻が、数分違いで飛翔体の攻撃を受けました。人的被害は報告されていませんが、実際に輸送そのものが標的になった意味は大きく、WTIは5.56%高の90.53ドルへ急騰しています。
そこから先の連鎖が、この日の本質です。エネルギー価格の上昇はインフレ期待を押し上げ、その圧力が国債市場に向かいました。日本の10年債利回りは1996年以来となる3.000%に一時到達し、英国の30年債利回りは1998年5月以来の5.89%へ。米国・ドイツを含む主要国の国債が同時に売られる、いわゆるグローバルな債券ルートです。地政学リスクが高まれば通常は国債が買われますが、今回は逆に売られました。市場が警戒しているのが「有事による景気後退」ではなく「有事によるインフレと、それを止めるための金融引き締め」だからです。
株式はその金利上昇を素直に嫌気し、S&P500が0.70%安、NASDAQ総合が1.01%安、NYダウが0.77%安。割引率の上昇に弱いハイテク・グロースの下げが大きく、金先物も1.28%安の4,374ドルと、有事の買いより実質金利上昇による売りが勝ちました。株・債券・金がそろって売られる展開は、資金の逃げ場が現金と原油しかない状態を示しています。
もっとも、下げ幅自体は主要3指数とも1%前後にとどまっており、パニック的な売りではありません。この均衡が崩れるとすれば、ホルムズ海峡での商船被弾が単発で終わらず連鎖した場合でしょう。2日夜のADP雇用リポートとベージュブック、そして4日の米雇用統計までは、原油と金利をにらんだ神経質な値動きが続きそうです。